わたしはわたし👞

~国内外を転々としながら楽しい生活をめざして奮闘中~

閉めようとしたのに閉まらないドア

付き合いがいちばん長かった取引先へライターを辞めると告げた。

「夫の海外赴任に帯同するので」という理由にしたが、本当はそれが真実ではないことを私は知っていた。海外でもライターの仕事はできる。もともとシンガポールに住んでいた頃にライターを始めたのだから。

では、なぜ辞めるのか?

自分の書いている文章に自信が持てないことや、これ以上、人との関りが極端に少なく、自宅でひとりで文章を書くライフスタイルを続けたくなかったこと。何か新しいことに挑戦したくなったなど、いろんな要因が重なったのだと思う。人生を少しリセットしたかったのかもしれない。

(これでライターは終わりだ)

メールを送信した後、スッキリした気分でいたら、連絡した取引先から予想外の反応が返ってきた。

「また何かを依頼することがあるかもしれないので、そのときは検討してください」

と言う。

しかも、メールの締めくくりが「今後ともよろしくお願いします」だ。

え?

思わず吹き出してしまった。

ただ、そんなふうに言ってもらえたことが、純粋にうれしかった。

そして、なぜか、文章や写真のスキルを磨いておくかな・・・。せっかく身に着けたスキルだもんな。とまで思ってしまったのだ。

私は今まで、自分が書いている文章や撮った写真など、他のもっと経験豊かでスキルの高いライターやカメラマンに比べれば、未熟で価値の低いものだと思っていた。

もちろん上を見ればきりがない。

しかし、それでも、少なくとも、ずっと仕事を依頼してくれていた取引先の役には立てていたのかもしれない。誰か1人くらいは私の旅行記事を見て、今度行ってみようかなと思ってくれた人がいたのかもしれない。

「文章を書く」ことと、今後どう付き合っていけばいいのだろう。

・・・。

ライターという部屋のドアを完全に閉めようとしたつもりが「まぁまぁ、開けておけばいいじゃない」という感じで、半開きのままになってしまった。

ライターとして作った名刺は、しばらく取っておくかな。