前から気になっていた映画「枯れ葉」を観に来た。
この映画は、フィンランド・ヘルシンキで繰り広げられる、中年男女の素朴な恋愛話である。ハリウッド映画のような派手さはないが、北欧ってこんな感じなのかな?などと思いながら、観ていられるおもしろさがあった。たとえば、主人公が住んでいるアパートのインテリアがカラフルで可愛かったり、主人公をはじめ皆、あまり表情がなかったり、どの家にもテレビがなくて古ぼけたラジオを聞いていたり。
印象的だったのは、幸福度が高いイメージのフィンランドで、誰も彼もがちっとも幸せそうじゃなかったことだ。主人公の女性は勤めていたスーパーで消費期限切れの商品を持ち帰ろうとしたことがばれてクビになり、レストランでの皿洗いや工場での肉体労働など職を転々としながら、毎日けだるそうに生きている。この女性に恋をした男性は、アルコール中毒のために肉体労働をしていた仕事先を2ヵ所解雇され、ますます酒に入り浸る日々・・・。どの国でも皆、生きて行くことは容易ではないのだ。
それにしても「枯れ葉」って。
主人公たちは40代半ばと思われるが、もう「枯れ葉」なのか?若葉でないことは確かだが、まだいくらか水分を含んでいるのではないのか。
映画があと3分の1くらいになった時、通路側で突然「カチッ」という音が鳴り、ポッとオレンジ色の明かりが小さく灯った。暗くて足元が見えないので、誰かがライトでも付けたのだろうとあまり気にしなかった。その後も「カチッ、カチッ」と何度も音が鳴り、私の後方席でごたごたしている人がいたので振り向いてみると、なんとじいさんが火のついたライターを片手に歩いているではないか。
(!?)
終わりかけの映画に途中から入って来て、片手に火のついたライター・・・。なんかおかしくないか?いくら館内が暗いからといって、映画館でライターなんかつけるだろうか。
まさか、灯油でも撒いて火をつける気じゃないだろうね、このじいさんは。我々を「枯れ葉」にする気か!
私のネガティブ思考と妄想が止まらなくなり、映画どころではなくなった。後ろ斜めに座ったじいさんがおかしな行動をとり始めたら、一目散に逃げられるように、体勢を整えておかねばならない。
チラチラとじいさんを見やりながら映画を観なければならないので、気が散ってしょうがない。
その後、映画が終わるまで、じいさんは特にあやしい行動は取らなかった。
私はどっと疲れた・・・。
じいさん、これからは携帯電話のライトを使ってくれ。