暑さにうなされながらベッドに横たえていると、ふと「世界一周はもういいかな」と思った。
世界一周をすることで、パッとしない自分の人生を何か特別なものにしたかった。
しかし、自分の人生を特別なものにしようと、もがけばもがくほど、うまくいかなくなるようだ。
現に、こうしてバリに来たものの、体調を崩してずっとホテルにこもったまま。ちっとも楽しく過ごせていない。こんなことになるなら、日本で健康にパッとしない毎日を気分よく過ごしていた方が良かったのではないか?
独身の頃に比べて、結婚してからの自分の人生がなんだか輝きを失ったような気がして、この9年間ずっと悩んでいた。
「もっと人生を輝かせるんだ!」
と、自分で自分の首を絞めて、苦しんでいた。世界一周して旅行記を書くというのも、そのうちの一つだったのだと思う。
しかし、9年間も悩んできたのだから、もう悩むことから自分を解放してあげたい。
パッとしない人生でもいいじゃないか。
キラキラした人生を送っていそうな芸能人でも自殺するくらいなのだから、平民の私の人生がパッとしないのは普通のことなのだ。
そもそも完璧な人生など存在せず、みんなどこかで「なんかパッとせんなー」と思いながら、生きているのかもしれない。
ショートケーキを買ってきたつもりが、箱を開けたら、ピーチのタルトやモンブランだった。なんだか違うものになってしまったけれど、ピーチのタルトもモンブランも美味しいからまぁいっか。
自分の人生もそんなふうに考えれば、また別の幸せが感じられるのかもしれない。
あ、部屋の中に、やもりがいる・・・。