「6月に不動産屋に物件を紹介してもらうから、一緒に見に来ては?」
パスタ国へ赴任を控えた、旦那からの提案である。私の飛行機代と宿泊費も、会社から支給されるのだそうだ。
日本からイタリアまでは、トルコで乗り継ぐ場合(この便が一番良さそう)、移動時間の合計は18時間半とある。
(移住先の下見か。遠いし、憂鬱やな・・・)
私のもっぱらの興味は、南インド料理作りの習得や、北インド・ダラムサラで見つけたチベット仏画学校へのプチ留学であり、パスタやピザではないのだ。
それに昔シンガポールへ移住した時の経験から、「海外移住=慣れるまで色々と辛い」という思い込みが出来上がってしまっており、あまり気乗りがしない。
(自分が特に住みたいわけでもない国に住むんやから、そら気乗りせんわな)
と、自分の気持ちを受け入れながらも、なるべくニュートラルにイタリアを見られるようになりたい。自分が憂鬱な気持ちでいると、何もかもがネガティブに見えて、本当は素敵なものも素敵だと感じられなくなる。これは損だ。
移住先の下見と考えると憂鬱になるので、イタリアから無料旅行に招待されたと考えることにした。それならいつも通り、ただ海外旅行を楽しめばいいだけなので気が楽だ。
さっそく持ち運びに便利な、小さい方の地球の歩き方を購入。パラパラとめくりながら、どんなものがあるのかチェックしてみる。
パスタ国赴任を聞かされた当初は「そんなに毎日パスタとピザばっかり食べられるかい!!」と思ったが、それ以外の食べ物もちゃんとたくさんある。サフランやビーツで色を付けたという黄色やピンク色をしたおぞましい外見のリゾットや、豚の内臓やら何やらとキャベツを煮たややグロテスクな食べ物、中国で出てきそうな牛肉の胃袋煮込み・・・。ジェラートは文句なしにおいしそうだ。
おしゃれなカフェには事欠かなさそう。
そして、ワインとつまみのまぁおいしそうなこと!
私は日本茶インストラクターの資格を持っているのだけれど、お茶とビールと日本酒とワインがあったら、迷わずワインを飲むだろう。イタリアのおいしいワインをたらふく飲めるのは心が躍る。
チャイナタウンもあるので、イタリア料理に飽きたら、中華料理が食べられるのは助かる。アメリカ在住時にも中華料理に助けられたことがあり、世界中にチャイナタウンを作ってくれた中国人には本当に感謝したい。
シンガポールへ移住した経験から言うと「新しい生活をがんばって作らなければ!!!」と意気込むと疲れるし、神経がすり減る。そして、メンタルによくない。だから、今回は新しい生活を作ろうだなんて思わずに、ただ、イタリア生活を自然に、できるだけ気楽に送るつもり。
その門戸がもうすぐ開こうとしているようだ。