LCCでシンガポールへ飛ぶのも(なんと片道約3万円!)、片道チケットで海外旅行をするのも初めてだった。
昔、3ヵ月間、アジアをひとり旅したことがあるが、その時は全ての訪問国のチケットと滞在ホテルを前もって予約していた。心配性の私は、先の安全がある程度確保されていなければ、前に進むことができなかったのだ。
しかし、シンガポールは以前住んでいた勝手知ったる国。それに、アジア圏のほとんどの国を旅し尽くした今、もう心配はいらない。
さて、シンガポールに無事上陸したわけだが、ここからどうしようか。よくよく考えてみれば南インドへ渡らなくても、シンガポールのリトルインディアにはおいしい南インド料理屋がたくさんある。そこで南インド料理をたらふく食べて、料理名を突き止め、本場の味を記憶できれば、後はYoutubeか何かでレシピを探し出して、自分で作れるのではないか?
どうやら私はインドへ行くエネルギーがないようだ。
2月に夫のパスタ国への異動を聞かされてから、新天地への引越しを前向きに考えようとはしていたものの、正直言って、私は精神的に疲れていた。
ホテルを出て、リトルインディア行きのMRTをめざす。
湿度の高い、じめっとした暑さ。
どこかから香ってくる、南国特有の甘い花の香り。
(シンガポールは落ち着くなぁ)
シンガポールに住んでいた頃は「自分の人生はこれでいいのか・・・」などと悩んでばかりだったが、もはや自分の生活圏ではなくなり、第二の故郷と化したことでホッとできるのだろう。まぁ、第二の故郷と化すまでに、メンタルをやられて心療内科送りになるなど、海外移住特有のさまざまな辛いことがあったが・・・。その辛い経験をまたパスタ国への移住でしなければならないのかと思うと、ため息が出る。
まず訪れたのは「スパイスジャンクション」という南インド料理屋だ。ここは私の愛してやまないケララ料理を売りにしているので、期待が高まる。
何種類ものカレーが食べられるタリ―を頼む。運ばれてきたカレーを口に運んでみると
(?)
南インドのケララで食べたものと、何かが違う。
他のカレーも食べてみたが、自分が記憶している味とは明らかに違う。
ここのカレーは少し辛すぎる。
私がいつも南インド料理を食べていたのは、インドの伝統医療アーユルベーダが受けられる療養所だったから、あまり辛くなかったのかもしれない。
これは困った。「そうそう、この味!」というカレーに出合って味を記憶することが目標だったので、「んん?!」となっては目標を達成できない・・・。
夜に別の店でまたタリ―を食べることにした。
昼に食べたタリ―で腹が膨れて、夜になってもお腹が全く空かなかった。
毎食、いろいろな店で南インド料理を食べる予定だったのだが、これ以上、味の濃いカレーは食べられない。この日の夕食は、ホテルの隣のセブンイレブンで買った、まずいおにぎりになってしまった。
シンガポールにはたくさんおいしい食べ物があるのに、なんてことだ・・・。