わたしはわたし👞

~国内外を転々としながら楽しい生活をめざして奮闘中~

整形外科の先生の喝で旅に出る

「何を言うとんや!行った方がええと思うよ」

骨折した足の小指の治り具合を診てもらっている時に、70歳はとうに過ぎていると思われる、先生に言われた。

12月24日に足をドアに強打して以来、近所のある整形外科にお世話になっている。とてもフランクに話せるいい先生がいて、足の治り具合を見ながら、世界一周の出発日を決めようとしていた。

が、最近の私といえば、世界一周の準備を進めれば進めるほど、やることがたくさん出てくるので、だんだん面倒くさくなっていた。どの国へ行くか、ルートはどうするか、世界一周航空券でカバーされない航空券の別手配、ホテル、現地でのアクティビティ、何を持って行くか、金はちゃんと現地のATMで引き出せるだろうか・・・。

しまいには、なぜ世界一周などに行くのだろう?という致命的な疑問が浮かんでくる始末。

そんな時に、遠方に住む友人からおもしろそうなオファーが来る。

3月中旬に3日間、イベントをやるので、1日だけでも、ティースタンドをまたやってくれないかという。私は数年前、旦那の転勤で静岡に住んでいた時に、自分のティースタンドを営業していたことがあった。アジアをひとり旅した先で見つけた、自分のお気に入りのお茶を売っていたのだ。関西への引越しに伴って閉店したが、ティースタンドの営業はなかなか楽しかったので、機会があればまたやりたいと思っていた。

手元の世界一周航空券の見積もりによると、3月中旬はトルコにいることになっている。

(う~ん・・・どうしよう。皆にまた会えるし、楽しそう。世界一周なんかやめて、ティースタンドやろうかな・・・)

一方で、チャンスがあるにも関わらず、世界一周にまた出ないことに失望している自分自身を感じた。私が世界一周をしたい本当の動機は、どうやらいろんな国を旅したいというよりも、今まで勇気がなくてできなかったことができるようになりたいという「挑戦」にあったようだ。

さて、友人には今日中にティースタンドをするかどうか、回答しなければならない。どうしたもんか・・・。

そんな時に整形外科を訪れて、なんだか世界一周に出るのが面倒になってきたと先生に話したところ、返って来た言葉が「行った方がええよ」だった。

「人生は短い」と、先生。

「短いですか」と、私。

「(無言でうなずく)わしなんか行きたくても、行かれへん」

「・・・・・・」

「今のところ、7割治ってます。2月末だと9割治ってる。え?登山?生死を分けるような山でなければ、問題ないでしょう。海外から戻ったら、また来てください」

海外から戻ったら、また来てくださいって・・・。世界一周に行かんかったら、どうなるんやろう・・・。

(もう行くしかない・・・)

整形外科を出た時、私はなぜかクックックッと笑い出した。すがすがしい気分だった。まるで、バンジージャンプをしたいけれど勇気がなくて飛び降りられない私を、色んな人が取り囲んでじりじりと詰め寄って来て、もう飛び降りるしかない状況に追い込まれたかのような感覚だった。飛ぶのは怖いがもうこれ以上、飛び降りるか飛ぶのを辞めるかを考えなくても済むのだ。

私は、ワンワールドのマイページに保存してあった、世界一周航空券の見積りを再度読み込み「予約」ボタンを押した。