わたしはわたし👞

~国内外を転々としながら楽しい生活をめざして奮闘中~

チベット仏画教室の不思議

月1回、チベット仏画教室に通っている。

ブータンやインドのダラムサラなど、チベット文化圏を旅するのが好きで、チベット仏画に興味を持った。チベット仏画は日本の仏画よりも色鮮やかで、絵がとても複雑。「こんな美しい仏画を描けるようになれたらいいな」という憧れと、仏画を描くことですさんだ心をきれいするために通い出したのだった。

ダラムサラで買ったチベット仏画

仏画教室が行われているのは、とあるチベット料理店。店内には、タルチョと呼ばれる経典が書かれたカラフルな旗や、チベット仏具などが飾られていて、まるでチベットにいる気分。昔、自分が旅したチベット文化圏の記憶がよみがえり、胸がいっぱいになる。

先生は日本語がペラペラなチベット人の仏画絵師で、教えるのがとても上手。仏画の見本をもとに、どの線をどの順番で引いていけばいいのかを教えてくれる。あれこれ細かいことは言わずに、生徒が見よう見まねで描くのを温かく見守ってくれるのがいい。描いた絵を見て「この線はもう少し上に描くといいですね」などときちんと指導もしてくれます。

異国感あふれる店内でチャイを飲みながら、仏画を描くのに没頭していると、なんとも言えない心地良さに包まれる。

去年、インドのダラムサラで参加した、チベット仏画体験とはえらい違いだ。

ダラムサラの仏画教室の先生は「伝統通りにやらねばならないのです」とのことで、指導が非常に細かかった。私は心を整えるために仏画をちょっと描きに来たのであって、仏画絵師になるために門を叩いたのではない・・・・・・。

チベット仏画を描く時は、白紙に縦横の線を決められた間隔で引き、その線をもとに仏画の見本を模写していくのだが、この線を引くのが難儀だった。なぜか定規を使わずに、短冊をなが~くほそ~くした紙を使って、線と線の間隔を測るという謎の伝統が強いられる。しかも、引いた線が0.5mmずれただけでも

「やり直しです。線がずれると、正確に仏画を描けなくなる」

とのことで、おおざっぱな性格の私は発狂しそうになった。早く終わってくれ!と思った。

線を引くのにやたらと時間がかかったおかげで、仏画を描く時間が残っていない。後で、この仏画教室を運営しているインド人のマダムに仕上がりを見せないといけないのに。

(ヤバい。このままだと、何も見せられんぞ!)

私は、先生が「とにかくゆっくり描いてください。全部描ききれなくてもいいから」と言うのを無視して、超特急でブッダの顔を描いた。先生はもはや私を指導するのは諦めたようで、私が雑に仏様のお顔を描くのを無言で眺めていた。

ダラムサラでの出来事を思うと、いま通っている教室は天国だ。心穏やかな先生がおおらかに教えてくれるのだから。

それにして、全く同じブッダの顔を描くのでも、先生の教え方ひとつでこんなに楽しく感じるようになるのだから、人間の心は不思議なものです。