時々、ずっとずっと世界中を旅して、そのままどこかの国で寿命が尽きてしまえばいいのにと思うことがある。
私にとって海外は刺激の宝庫。行ったことのない国へ行けば何もかもが新鮮だし、景色の美しさに感動したり、人との出会いに心温まる体験をしたり、文化の違いに驚いたりするなど、毎日なんらかの刺激が得られる。
それに、旅行中は、その日をどう楽しむかだけを考えればいいし、私はいつも1人で旅行をするので、自分のことだけ考えていればよい。仕事をどうしようとか、将来どうなるんだろうとか、家族関係がどうだとか、老後の資金がどうだとか、面倒な問題について考えなくて済む。
つまるところ、私は、海外を放浪することで、自分が今送っている刺激のない退屈でたまらない日本の生活から逃げ出して、ずっと足場を固めずに、自分の人生に対して宙ぶらりんなままでいたいのかもしれない。
現実を直視できない、いつまでも大人になりきれない「永遠の少年」なのだと思う。
「幸せになりたければ、外に刺激を求めるのではなく、自分の内側に心の平穏を築きなさい」
と仏教では教えられる。
わかっている。幸せになるために外界から刺激をいくら得ても、また別の刺激が欲しくなる。どんどん欲しい刺激の度合いは強くなり、それが得られなくなると欲求不満に陥り、幸せじゃなくなる。
それでも、私は、自分の人生を生き生きとさせるのは、やはり刺激だと思う。
新しい場所、外国語での会話、新たな人との出会い、トラブル・・・。そういう刺激の宝庫に自分を常に浸していたい。
ビールを飲みながら夫の帰りを待っているとふと虚しくなり、そんなことを考えてしまったのだった。