わたしはわたし👞

~国内外を転々としながら楽しい生活をめざして奮闘中~

自分を知る旅のはじまり

夫の海外赴任がわかって以来、精神的に不安定になりがちなので、認知行動療法のカウンセリングを受けることにした。初回は90分間、たっぷりと話を聴いてくれるのだそう(もちろん、それなりに料金はかかるが・・・)。

とあるビルの一画にあるそのカウンセリングルームは、白を基調とした無機質な空間で、まるで会社のオフィスのような雰囲気。誰もいない9畳くらいの部屋にカウンセラーと向かい合って座り、ここに来た理由やこれまでの経緯などを話していく。

私の思うカウンセリングのいいところは、主に3つある。

1つ目は、カウンセラーは傾聴の訓練を受けているので、人の話を否定したり、筋違いのおかしなアドバイスをしたりせずに、話を聴いてくれることだ。友人と話していると、訳の分からないアドバイスをしてきたり、話を自分の話題に持っていったりされて、余計に悩みが深まることがある。そういったことがないのはありがたい。自分が思っていることを素直に話せる場があるのは大切なことだ。

2つ目は、自分の頭の中にあることを言語化することで、自分が思っていたことを改めて認識できること。それに、自分をより深く知ることができるような質問をカウンセラーはしてくれる。

たとえば、一体いつまで転々とする生活を送るのか不安だと話すと、転勤族の夫について行って転々とする生活と、転々としなくても済む生活を作ることと、どちらがしっくりくるのかと質問された。

3年おきに平穏な生活が脅かされるのはたまらないが、もともと私は新しいことや刺激のあることが好きなタイプであり、ずっと同じことができない性格である。どちらかを選べと言われたら、より刺激があっておもしろそうな方を選ぶだろう。ということは、私の選択基準は「刺激があって、おもしろそうかどうか」ということか。

3つ目は、思ってもいないような質問をされて、自分が信じていた価値観から解放されることがあることだ。

私には「経済的に自立していないと、人生の選択が自由にできない」という価値観があり、これが自分を苦しめていた。あちこち転々とする生活を送っていると、会社員時代のようなまとまった収入を得ることは私にとっては難しく、それが自分の人生を不自由にするのではないかと不安だった。

しかし、カウンセラーはこう質問してきた。

「自立して自由な選択ができないと、不幸になりますか?」

え・・・不幸になるわけではない。自由な選択ができなくても、幸せに暮らすことはできるはずだ。経済的に自立していて自由な選択ができても、不幸な人はいる。もっと言えば、経済的に自立していなくても、自分にその意思があれば、どんな選択をすることだって可能なのかもしれない。これで私は「経済的に自立していないと、人生の選択が自由にできない」という価値観から自由になれた。

こんなふうにして、自分の思考パターンを知り、それをどう変換させられるかという練習をして、90分のカウンセリングはあっという間に終わった。これからは自分で自分の思考パターンに気づいて変換できるよう練習していく。

今回、夫の海外赴任がきっかけとなってカウンセリングを受けることになったが、自分と向き合って、これからどう生きて行きたいのかをきちんと考える時期に差し掛かっていたのだと思う。そういう意味では夫の海外赴任は、私の人生の中の単なる1つの出来事にしかすぎず、たいした問題ではないのかもしれない。

(これから私は自分を知る旅をするんだな)

カウンセリングルームを出た後に、そんなふうに思った。