わたしはわたし👞

~国内外を転々としながら楽しい生活をめざして奮闘中~

8/12(土)台湾のレトロな喫茶店で味わう家庭料理

90分のマッサージが終わった時、時刻はすでに14時に近かった。空腹に耐えかねて、側にあった『優の珈琲』という喫茶店に入ることに。1973年から開店している老舗らしい。

ドアを開けると、小柄で白髪の優しそうなおじいさんが迎えてくれた。70代くらいだろうか。

渡された中国語の食事メニューを見て首をかしげていると、我々が日本人だと気づいたおじいさんがカタコトの日本語で教えてくれる。

「鶏、魚、豚。コーヒーか紅茶」

コーヒーか紅茶がついて、約500元か(約2250円)。まぁまぁいい値段がするじゃないか。とんでもない量の料理が出てきたらどうしようと心配しながら、旦那は鶏を、私は魚を注文した。

店内は、日本のレトロな喫茶店を少し明るくしたような雰囲気だ。正面にはオープンカウンターがあり、サイフォン式のコーヒーメーカーが置かれている。8席くらいあるテーブル席にいたのは、我々ともう一組の台湾人だけ。

おじいさんは日本語が少し話せるらしく、我々に日本語で話しかけてくれたり、テレビをNHKに変えてくれたり、雑誌を持って来てくれたりした。

『日本の絶景』と『日本酒図鑑』・・・。

料理はおばあさんの担当のようだが、一向に出てこない。

まさか食材の買い出しから始めているんじゃないだろうねと不安になってきた頃、やっと旦那の鶏が運ばれてきた。

「!」

まるで日本の定食じゃないか。

生姜で煮た鶏肉にインゲン炒め、野菜炒め、卵焼きとスクランブルエッグの間のような食べ物、玄米が混ざったご飯。

鶏肉を食べた旦那の感想は、

「無味・・・」

だった。

続いて、私の魚が運ばれてきた。

揚げたカレイは優しいコショウの味がする。インゲン炒めはほのかなマヨネーズ風味で、冬瓜スープはまるで味がない。

この老夫婦は普段、自宅でこういった料理を食べているのだろうか。レストランで食べる台湾料理は結構味が濃いものが多かったから、素朴な味付けが意外だった。

定食の味はイマイチでも(失礼!)、あのおばあさんが台所でせっせと作ってくれたことを想像すると、どこか特別な味がした。

外では、どしゃぶりの雨が降り出した。傘を差した人たちが行き惑っているのを眺めながら食後のコーヒーをすすっていると、なんだかホッとする。

私はこの喫茶店が気に入った。

この老夫婦が醸し出す穏やかな雰囲気のおかげなのか、ここでは、時間がゆったりと流れていた。それに、おばあさんが作ってくれた台湾の家庭料理が、ひとときの安らぎのようなものを与えてくれたように思う。

もしかしたら私は、人のぬくもりを欲していたのかもしれない。

台北には、おしゃれなカフェやおいしいレストランがいくらでもある。でも、次、台北に来たら、またこの喫茶店に来るだろう。

異国に、ささやかな自分の居場所を見つけたようで、なんだかうれしくなったのだった。