私はとにかく人の面白い話を聞くのが好きで、いろんな人と話をしては質問するようにしている。新しいことを知ると勉強になるし、ちょっと変わった人の話を聞けると「えぇ!?」と興奮して、面白い小説を読んでいるような高揚感が味わえる。
ここ最近で、最も「えぇ!?」と驚いた話は、とあるレストランで聞いた話だった。旦那様がシェフで、奥様が料理をサーブしているのだけれど、奥様がかなりユニーク。
会社員をしていた旦那様に、奥様が突然「会社は辞めて料理人になりなさい。フランスへ行って修行してきなさい」と言い渡したのだそう。旦那様は、はい、分かりましたと会社員を辞めて、フランスに単身渡り、料理を本格的に勉強したのだとか(それもすごい)。旦那様がフランスにいた数年間、奥様は看護師をしながら、1人で子育てをしていたそうです。
旦那様が帰国後は、何軒か飲食店を経営。今では家族で、おしゃれなペンションを経営しながら、その一画にある和洋折衷のレストランでおいしい料理を提供されている。奥様の鋭い勘や嗅覚と、それに従った仏のような旦那様に脱帽です。
年配の人や経営者など、さまざまな人生経験を積んだ人との会話は、勉強になることが多い。
ある日、工場で働く73歳のおじいさんと話す機会があった。30Kgもある荷物を易々と運んだり、フォークリフトを乗り回して500Kgの荷物を次々と運んだりと、とても元気。元気の秘訣は何かと聞いたら、こう答えた。
「いつでも、何かに恋してることかな」
恋する対象は人だけではないのだそう。今日の空は青いなぁとか、雲の形がいいなぁとか、道端に咲いているお花がきれいだなぁとか、何かに関心を持つことが大切とのことだった。
近所の台湾料理屋に居合わせた、とある建設会社の社長と話した時のことだ。「飛行機はエコノミークラスに乗る」と言うので、たくさん稼いでいるでしょうに、なぜビジネスクラスに乗らないんですか?聞いたことがあった。
「1万円の利益を出すために、どれだけのことをしないといけないか知っているからね」
という答えが返って来て、軽くショックを受けた。きっとこの社長は、利益が多かろうが少なかろうが、入ってくるお金に感謝をして大切に使っているのだ。
利益を生み出すためには、取引先が信用して仕事を発注してくれなければならないし、従業員が辞めずに働いてくれなければならない。そういういろんな大変さを知っているので、無駄には使わない。
当時、自分の少ない報酬に悪態をついていた私は、この話を聞いて心を入れ替えました。
飲食店の店主、タクシー運転手、習い事教室の先生や生徒など、人に面白い話を聞ける機会はゴロゴロ転がっている。
いろんなところで、いろんな人の話を聞いて、自分の日常に小さな波風を立てるのも悪くないもんです。