わたしはわたし👞

~国内外を転々としながら楽しい生活をめざして奮闘中~

海辺の食堂で味わう「孤独のグルメ」

のれんをくぐって店に入ると、「わぁ!これだ!」とうれしくなってしまった。

店内には、テーブル席が3つと、3人くらいが座れるカウンターがあるだけ。人の良さそうなおじいさんが、ニコニコしながら迎えてくれた。昔からあるこぢんまりとした安食堂の雰囲気が満載で、まさに「孤独のグルメ」的な店だ。

「孤独のグルメ」は、独身の中年男性が、さまざまな飲食店を食べ歩くマンガ。ドラマ化されたものをアマゾンプライムで観ているのだけれど、この主人公の、まぁおいしそうに食べること!出てくる料理も、汁なし担々麺、煮魚定食、炭火焼き鳥など、どれもこれもおいしそうで、観ているだけで腹が減ってくるのだ。

主人公が決まって訪れるのは、個人経営のこぢんまりとした、いかにも中年男性が好きそうな店ばかりだった。今までは、そういった店は敬遠していたが、あんなにおいしそうに食べるところを見せられたら、行かずにはいられない。

というわけで訪れたのが、この小さな海辺の街にある安食堂だった。

何を注文しようか。さば煮定食、焼き魚定食、焼きあなご丼、うどん・そば―—。隣のテーブル席に運ばれてきた刺身定食を見て、同じものを注文することにした。私の席の後ろから、おでんのいい香りがする。ぐつぐつと煮えて味が染みていそうな大根や卵を見ていたら、誘惑に負けてしまった。まずは、おでんで一杯やることに。

程なくして、料理が運ばれてきた。タイとタコは身がよく引き締まっていて新鮮。特に、このだし巻き卵が気に入った。昔、祖母が作ってくれたものに味がよく似ていた。祖母は寝たきりになってしまい、もう2度とおいしい手料理を味わうことはできない・・・。

私がしゅんとしながら食べている横で、真っ黒に日焼けした肉体労働者と思われる中年男性2人が、ままならない人生をぼやいていた。

「生コン(きっと工事現場の仕事だろう)はえぇよ、家に帰れるからな。トラック運転手は帰られへん」

「若いうちはええよ。でも年取ってきたら、だんだん体力無くなって来るからな・・・」

「そない言うてもな、皆、大変なことは何かあるよ」

確かに、うまくいっていそうに見えても、皆「何か」を抱えながら生きている。

今回訪れた食堂には、どこか親密な空気が漂っていた。知らない客同士でも、同じ屋根の下で、一緒にごはんを食べているという温かさがあった。料理を運んでいたおじいさんの優しい雰囲気がそう感じさせるのか、狭い店内で人との距離が近いからなのかはわからない。

いずれにせよ「孤独のグルメ」的な店は、人をホッとさせるようです。