わたしはわたし👞

~国内外を転々としながら楽しい生活をめざして奮闘中~

人生で一番ワクワクしたロンドンひとり旅

これまで22ヶ国を訪れてきた中で、最も印象深い旅先はどこかと聞かれたら、ロンドンと答えるだろう。

2004年、大学4年生の秋だった。

「自分には、大学生活中に誇れるような実績が何もない」

と、いじいじしていた私は、何か大きなことに挑戦しようと思い、ロンドンへ人生初のひとり旅に出ることにした。

ロンドンを選んだのは、推理小説「シャーロック・ホームズ」の大ファンだったからだ。ロンドンのベーカーストリートにあるホームズの住まいを体現した「シャーロック・ホームズ博物館」に行ってみたかった。

しかし、海外旅行は、友人と行ったサイパンだけだったので、勝手がよくわからない。おかげで、5泊6日の長めの旅だというのに、持ち運びに不便極まりないボストンバッグに荷物を詰めて行ったし(スーツケースを持っていなかった)、ロンドンへ向かう途中で経由した韓国の空港で、なぜか大容量キムチを土産に買ったりもした。

ロンドンに着いてからは、地球の歩き方を握りしめて、毎日、せっせと観光地を訪ね歩いた。ロンドンブリッジ、大英博物館、バッキンガム宮殿、コベントガーデン——

「シャーロック・ホームズ博物館」にたどり着いた時は、英語もろくに話せないのに、自分ひとりの力でここまで来られたことに、小さな達成感を覚えた。

シャーロックホームズ博物館

Source: Sherlock Holmes Museum - The official home of Sherlock Holmes (sherlock-holmes.co.uk)

その一方で、ため息をつきたくなることも、たくさんあった。

お札が古いのか、なぜか日本で両替していったポンドが使えないので、銀行へ行く羽目になってしまった。

Tシャツにジーンズ姿の男性銀行員が、私が差し出したお札を入念にチェックし、使えるものに換えてくれたが、あれ?イギリスは、紳士の国じゃなかったのか?日本の銀行員がこんな姿で働いていたら、ニュースになるだろうに。

貧乏学生で金がなかったから、食事はスーパーで買った総菜をホテルで食べたり、コンビニで買ったサンドイッチを公園で食べたりした。

総菜はパッとしない味だったし、コンビニで買った「エビ・サンドイッチ」なるものに至っては、800円もしたのに、信じられないくらいまずかった。パンはパサパサし、はさまっていたエビは生臭く、塗ってあるマヨネーズは味が薄すぎる。一体どうすればこんなものを作れるのか、真剣に考えたくなるレベルだった。

極めつけは、「オペラ座の怪人」を観に行った時の失態だ。

日本で何とかしてインターネットで購入したチケットを持って、劇場の席に着いた。ドレスアップしたマダムと正装したムッシュに囲まれながら、煌びやかなセットや美しいオペラに感動しっぱなしだった。

シャンデリアが天井から落ちるシーンの後、劇場の幕が下り、皆、ざわざわと席を立ち始めた。混んできては大変だから、早く帰らないと!と、私も慌てて席を立ち、劇場を後にした。

あぁ、混む前に帰ってこられてよかったなぁと、ホテルで時計を見たら、何かがおかしい。「オペラ座の怪人」の公演は、2時間以上あるはずなのに、なぜこんな時間にホテルにいるのだ?まさか、まだ終わってなかったのか?

私は、休憩をはさんで劇が続くことも知らずに、途中で帰ってきてしまったのだ。これはもう笑うしかなかった。

オペラ座の怪人を観た劇場

Source: Her Majesty's Theatre - A Royal History | LW Theatres News

と、いろんなハプニングに見舞われながらも、人生初のひとり旅を無事に終え、最後にこう思った。

「英語ができれば、もっと楽しかったのに違いない」

ホテルのウェイターをはじめ、何人かが話し掛けてくれたが、英語がわからなくて、誰ともまともに話せなかったのが残念だった。

でも今は、この旅はこれでよかったと思っている。よくわからないなりにも、いろんなところへひとりで行き、オペラ座の怪人も半分は観られた。ドジは踏んでも、危ない目には一切遭わなかった。

それに、私はその後たくさんの国を訪れたが、このロンドンの時ほど、ワクワクする旅をすることはなかった。旅を重ねれば重ねるほど、いろんなことに慣れてしまい、小さなことで一喜一憂しなくなっていった。ロンドンのひとり旅はきっと、英語の話せない、旅慣れしていない、初々しい自分だからこそできた冒険だったのだ。

今、ロンドンを訪れたら、どんな気持ちになるのだろうか。まだコンビニでは、まずいエビのサンドイッチは売られているだろうか。

歳を取りすぎないうちに、また訪れてみたいものです。