わたしはわたし👞

~国内外を転々としながら楽しい生活をめざして奮闘中~

お姉さんの顔をずっと忘れない中国・コロンス島の旅

「没有(ありません)。売り切れました」

おかしいなぁ、まだ朝9時半なのに。

福建省・厦門市にあるフェリーターミナルで、世界文化遺産に登録されている「コロンス島」行きのチケットを買おうとしていた。

トリップアドバイザーに「外国人には売ってくれなかった」という書き込みがあったが、その通りなのだろうか?しかし、よくよく聞いてみると、

「皆、インターネットで事前予約をしているので、当日券はもう売り切れなんです」

なあんだ、そうだったのか。それなら、ホテルのフロントにお願いして、明日の便を予約してもらうか。

コロンス島からみた厦門市の街並み

ホテルのフロントには、若くてきれいな中国人女性が3人並んでいた。

「今朝フェリーターミナルでコロンス島行きのチケットを買おうとしたら、売り切れでした。ネット予約しないと買えないようなので、予約してもらえませんか」

と、英語で説明すると、全員が石像みたいに固まった。どうやら英語を話さないようだ。仕方なく、まだ3ヵ月くらいしか勉強していない中国語を使おうとしたが「コロンス島」の中国語が分からず、絶望的な気分になった。

それを見ていたお姉さんたちは、あわわわと焦り出して、携帯電話の翻訳アプリを起動した。1人のお姉さんが、翻訳アプリに中国語で話し、日本語(どうして日本人だと分かったのだろう)に翻訳されたメッセージを私に見せた。

「どうしましたか?」

私は自分の携帯電話の翻訳アプリに英語で話し、中国語に翻訳されたものをお姉さんに見せた。

「コロンス島行きのフェリーを予約してほしい」

あれ、ちょっと待てよ。私はなぜ英語で話してるんだ?日本語でよくないか?

いつがいいですか?何人ですか?などと、3人のお姉さんたちと、携帯電話を介しながら、中国語と日本語でしばらく会話を続けていたら、「どうしたどうした?」という感じで、ポーターと思われるお兄さん2人も加わって、合計5人で私の予約にあたってくれた。私が時々、中国語を使うと、このお兄さんが親指を立てて「很好!(素晴らしい)」などと褒めて、場を和ませてくれるのだった。

異国情緒あふれるコロンス島

お姉さんがついに最終確認をする。明日午前10時10分発のコロンス島行き、1名、xx元。こちらで予約していいですかと聞かれ、お願いしますと答えた。

お姉さんがポチッと画面を押し、ようやくコロンス島行きのフェリーが予約された。すると、彼女は「ふぅ~」と大きく息を吐いて、胸をなでおろした。私がフロントに来てから、30分が経過していた。

私はなんだか胸がいっぱいになってしまった。たった1人の客のために、5人があーでもないこーでもないと相談しながら、一生懸命対応してくれたのだ。今回の件だけではない。ここ福建省に来るまで旅していた浙江省でも、出会った中国人たちは皆、親切だった。

レストランで中国語が読めなくて注文に困っていると、私が日本人だと分かった店員さんが筆談してくれた。あるテーマパークで中国古代の衣装をレンタルしたものの、着方が分からず途方に暮れていると、見知らぬおばさんが近寄って来て着せてくれた。量り売りの栗を買ったら、果物をおまけしてくれた。

そういう小さな親切の数々が、ひとり旅をしていた私の心に浸みて、ついに溢れた。

その後、コロンス島には無事行った。しかし、この旅から6年経った今も覚えているのは、コロンス島ではなく、フェリーを予約してくれた時のお姉さんの安堵した顔なのだった。