突然、思い立って、広島にある「大久野島」に来た。
ここは、600羽以上の野うさぎがいる「うさぎ島」とも呼ばれていて、外国人にも人気の観光スポットらしい。戦時中は、極秘で毒ガスを生産していたため、地図から消された過去を持つ。
新幹線に乗り、フェリーに乗り、島に到着したのはいいが、雨がジャジャぶりだ。
そんな中、皆が嬉しそうにエサをやるのとは対照的に、エサを持っていない私は、ホテルの前の広場にいるうさぎを少しひやかした後、部屋の窓からうさぎと人間を観察していた。
うさぎはポツポツとどこにでもいて、人間を見ると、ものすごい勢いで走ってくる。うさぎはのろい動物だと思っていたが、結構足が速いのだ。
人間の前に2本足で立ち上がり、エサをちょうだいとアピールしてくる姿が始めは可愛らしかったが、何度も見ているうちに飽きてしまった。
熱心に草を食べたり、置き物みたいにピタッと固まったり、突然猛ダッシュしたりするうさぎを見ているうちに、夕食の時間になった。
刺身や肉、揚げ物などを酒で流し込みながら、また人間観察をする。とりわけ興味をひいたのは、こちらの3組だ。
まず、60歳後半、いや、もしかしたら70歳くらいとおぼしき男性が、2人も、1人で食事をとっていた。高齢女性の一人旅は、度々見かけたが、男性を目にすることがなかったので、意外に思った。時代は変わり「老後は夫婦仲良く旅行」なんてものは、幻想になりつつあるのかもしれない。
それから、近くにいた、小さな子ども連れの家族2組。どちらの家族も、夫婦は、ほとんど口を聞かない。私の前にいた奥さんは茶碗を持ったまま、空中のどこか一点を見つめていて、軽い放心状態の時があった。うさぎ島に嬉々として来るには、疲れ過ぎているようだった。なんとなく日頃から、奥さんが1人で子育てに奮闘している姿が、目に浮かぶような気がした。
最後に、つけまつ毛を5個くらい重ねて装着している外国人女性。タイ人だろうか?化粧がやたらと濃くて、始め見た時にギョッとした。彼女は電車でも一緒で、なぜか気になって遠くから眺めていた。
(私もあんなふうに映ってたのかな)
コロナ前は、私もよくアジアを一人を旅した。旅慣れていて、1人でも楽しそうに見える彼女を自分に重ね合わせながら、なんだか微笑ましく思った。
さぁ、夕食も終わってしまい、温泉に入ったら、もうやることがない…。飲み残して持ち帰った日本酒を、部屋でチビチビやろうか。何かつまみが欲しいところだ。
どうか明日は晴れますように。
#ひとり旅 #うさぎ島 #コンフォートゾーンから抜け出す