わたしはわたし👞

~国内外を転々としながら楽しい生活をめざして奮闘中~

淡路島へ出稼ぎに行ったら ~その2~

淡路島の出稼ぎメンバーは日によって違うので、一期一会の出会いが楽しい。

「やりたいことがたくさんあるんです。でも、お金がない!」

今回、工場へ向かう送迎車で隣り合わせになったお姉さんは、いたずらっ子のような笑顔で言った。元アロマテラピストで、将来、自分の店を持ちたいのだそうだ。夢があるからか、目が生き生きしている。

(素敵な人がいるもんだなぁ)

と思っていたら、到着した工場の空き地のど真ん中で、堂々と放尿しているじいさんがいた。それも長いこと。こちらに向かってくるということは、放尿じいさんも作業員か。

「たくさん出して、すっきりしたでしょう」

と、われわれの送迎車を運転していた、60代の男性がからかった。

この60代のおじさまは、われわれを雇っている会社の社員なのだけれど、とってもおちゃめ。私たちがあまりにも早いペースで作業をすると「もっとゆっくりやりなはれ」と言ってくれたり、時々、冗談を言ってみんなを笑顔にしてくれたり、おやつやジュースなども差し入れてくれたりする。白髪がかなり混じったその若くない体で、私たちと一緒に立ち仕事をし続けるのは、さぞ堪えることだろう。だからこそ、その気遣いが余計に嬉しい。

昼休憩になり、皆で昼食を取ることになった。

焼き魚にきんぴらごぼう、卵焼き。私の横にいるおばあちゃんのお弁当には、おいしそうなおかずが並んでいる。ところが、おばあちゃんの様子が少しおかしい。鼻水をすすり始めたので、おやおや?と思っていたら、とうとうハンカチで涙を拭い始めた。何か悲しいことがあったのかもしれない。私が、差し入れでもらったハッピーターンを1つ無言であげると、おばあちゃんは少しだけ笑顔になった。

午後から、白髪交じりのおちゃめなおじさまは、腰がかなり辛そうだった。もう玉ねぎを見るのはごめんだと言わんばかりに、段ボール詰めをする玉ねぎを雑に放り投げた。ドゴッと音を立てて転がる玉ねぎたちを見ながら、私は笑いをこらえるのに必死だった。

今日も背中が鉄のように硬くなり、限界に達したが、なんとか17時まで持ちこたえた!私がヒーヒー言いながら腰に手を当てて歩いているのに、19歳の彼女は明日も明後日も明々後日も、今週は毎日出勤するのだという。学生だろうに、授業はないのだろうか。

この出稼ぎ工場は、見知らぬ人たちの人生が一瞬だけ交わる、スクランブル交差点のようだと思った。もし、ここにいる人たちに、どんな人生を歩んできたのかを取材して文章にできたら、さぞ面白い小説が書けるに違いない。

そんなことを思いながら帰宅すると、雇い主の会社からこんなラインが届いていた。

「お疲れ様です。ゆっくりしてくださいね」

今日も、いい一日だった。