イタリアに引っ越ししてから2週間。先週の水曜日に、ホテル住まいからアパートに引っ越しし、やっと生活が整ってきた。
アパートに入居した翌朝、汚れた衣類を洗濯機で洗って干し、掃除機で部屋の隅々まで心ゆくまで掃除し、キッチンで自分の好きなものを調理できた時、家事を自分で自由にできることは、とても幸せなことなのだと知った。
ホテル住まいの時は、2日に1回は掃除をしてもらえたのだが、掃除が甘くて居心地が悪かったし、洗濯はわざわざコインランドリーへ行かねばならなかった。部屋には小ぶりのキッチンが備え付けられていたが、料理をするには狭すぎる上に換気が十分になされないので部屋がずっと匂う。そのため、食事はスーパーの惣菜か外食、もしくはテイクアウトで、食へのこだわりが強い私にとっては大きなストレスだった。
それが今は、自分の身の回りのことを自分で自由にできる!
ある日、家事をしながら不思議なことに気がついた。
家事をしていると、自分に小さな自信が感じられるのだ。
日本では、私にとって家事は雑用でしかなかった。しかし、イタリア語はわからず、スーパーでもまともに買い物できなくなった今(砂糖を探すのにどれだけ時間がかかったことか)、身の回りのことを自分でできることは「私は赤ちゃんではない。自分のことは自分できちんとできるのだ」というささやかな自信をもたらしてくれる。
それに、家事を自由にできるということは、小さな範囲であったとしても、自分の生活をコントロールできている感覚が得られた。物事が思うように進まなかったり、勝手が違って戸惑ったりするイタリアにいても、この家の中のことだけは私が自由に支配できるのだ。毎日、夫の食わせる夕食のメニューや、どんな紙質のトイレットペーパーで尻を拭くかさえも。
最後にもう1つ言うと、毎朝、洗濯物を干し、部屋の掃除をし、台所に立つことで、異国に引っ越しして不安定になった自分の心を整えていっているのではないかと思う。もともと私は好奇心が強く、新しいものへの免疫がかなりある方だが、それでも環境の全てが新しくなってしまうと、心は不安定になる。行くべき場所もなければ、会うべき人もここにはいない。そんな中で、日本でしていた家事を同じようにできることは、私の生活の拠り所になる。
トントントントン。今日も台所に立って、日本食を作る。みりんも料理酒もないけれど、鳥の照り焼きに挑戦する。
またひとつ、小さな自信を感じられるように。
#海外生活 #イタリア #家事